マンションを選ぶ際には部屋数や1部屋の大きさ、各種設備や立地など、さまざまな条件を満たしている物件を探しますが、似たような間取りが多いと感じたことがあるでしょう。
日本で普及する田の字マンションとはどのような間取りか、その特徴やメリット・デメリットから、選ぶ際のポイントまでを知っておけば、マンション選びをスムーズに進める可能性が高くなります。
田の字の形をしたマンションの間取りとは?
マンションの間取り図を目にすると、誰もが一度は見たことのある間取りと言えば、田の字の形をした間取りではないでしょうか。
田の字マンションとは?間取りとその特徴
よく田の字マンションと呼ばれる間取りとは、間取り図を見たときに漢字の田の文字のような形をしていることから、この名前で呼ばれるようになりました。
漢字のように正方形ではなく、実際には奥行きのある長方形のような間取りをしていることがほとんどで、玄関の正面に廊下があり、廊下を仕切りとするように上下左右に4つの部屋に分かれます。
この間取りの特徴は、建築時の無駄をできるだけ省いた構造をしているところにあり、水回り関係のトラブルが少ないことで有名です。
施主の要望で建築される一戸建てのように、個人の好みが反映された間取りではなく、設備を維持するためのメンテナンスがおこないやすいことを念頭に置いています。
キッチン・浴室・トイレなどの水回りは部屋の中央に近いところに配置され、管理コストを下げることに成功した間取りと言えるでしょう。
また、角部屋ではなくても玄関側と外に面した側の部屋に窓が設置できることから、換気の良さや採光性の高さが魅力です。
この田の字マンションは昭和の時代に国内で普及し、主にファミリー層向けに設計され、現代でも一般に浸透している間取りとなりました。
マンションによくあるその他の間取りの形
田の字の形のほかにも、マンションによくある間取りは玄関が中央に配置されたセンターインと、バルコニーに面する辺を広くとったワイドスパンの2種類があります。
センターインの間取りでは、玄関が中央に配置され、玄関を中心にそれぞれの個室とリビングスペースが振り分けられている形です。
家族がスペースを共有するリビングなどと、寝室やそれぞれの個室といったプライベートスペースを分けることができます。
ワイドスパンの間取りでは、名前のとおりに幅が広く作られているという意味で、バルコニーに面した辺が広くとられています。
複数の部屋がバルコニーを共有するような形が一般的で、採光性がより高い間取りであると同時に、開放感ある空間を演出しやすい間取りと言えるでしょう。
代わりに、バルコニーに面する部屋同士のプライベート性が下がってしまうので、個人の空間を優先したい方には向いていません。
田の字マンションに住むメリットとデメリットとは?
日本国内で普及している間取りの田の字マンションは、どの地域でもよく見られますが、この間取りゆえのメリットとデメリットがあります。
低価格で選択肢が多い田の字マンションのメリット
田の字マンションに住むことで得られるメリットは、国内での普及率が高いことから物件の選択肢が多いこと、何よりも建築コスト削減により物件価格が低いことが挙げられます。
住まいを選ぶ際には、まずは職場や学校からの通える距離でなければなりませんが、全国各地で普及しているので、物件数には困りません。
安定した建築が可能となった現代では、建築コストで削減された分はそのまま物件価格にも反映し、同じ立地でも間取りの違いだけで低価格で購入することができます。
さらに、水回り設備のトラブルが少ないことや、定期的なメンテナンスがおこないやすいことは、長く住み続けるうえで重要なポイントです。
また、小さな子どもを育てているご家庭では、キッチンやリビングでの作業中でも子どもの様子が把握しやすいこの間取りは、使い勝手が良いと感じられるでしょう。
家族間のコミュニケーションが薄れるデメリット
田の字マンションの間取りの特徴は、玄関側に寝室などのプライベートスペースが配置されることで、家族間のコミュニケーションが薄れてしまうデメリットが生じやすい点です。
個室のプライバシー性が高いことはメリットにもなりますが、個室に閉じこもってしまいやすい構造をしているとも言えます。
この間取りのもう1つの特徴は、玄関から続く廊下が部屋の仕切りの役割をしている点ですが、この廊下のスペースをとるために、各部屋が圧迫されてしまうのもデメリットの1つです。
玄関側の部屋はもちろん、リビングと隣り合う部屋との間に廊下を設けなかった場合でも、リビングの一部を通路として利用するため、実際の面積よりも狭く感じてしまうでしょう。
また、部屋に備え付けの収納スペースも同じように影響を受けるので、荷物の置き場に困るというケースも考えられます。
田の字マンションのもっとも良い部屋のポイント
建物1棟分すべての部屋が同じ間取りをしている田の字マンションですが、同じ建物内であっても、快適性が高い部屋となるポイントがあります。
採光性・通気性を高めるなら高層階か角部屋
逆サイドに窓が配置される田の字マンションでは、採光性と通気性が良いという特徴を持っていますが、それは共用廊下側の窓を開け放しておくことができればの話です。
誰が通るかもわからない部屋の窓を開け放しておくことは、覗きや侵入など、犯罪リスクを上げてしまうことになります。
それを避けるには、通路の突き当たりにある角部屋を選び、自分以外に部屋の前を通る人がいないことがポイントです。
また、バルコニーに面するリビングの採光性を高めるならば、窓の外に日差しを遮るものがないことが重要となります。
そのためには、できるだけ高層階の物件を選び、窓の外に同じ高さ以上の建物が見えないことが望ましいです。
柱・梁で生まれるデッドスペースが少ない部屋
間取り図を見た段階ではイメージしにくいのですが、実際に部屋を見てみると、柱や梁が室内空間に入り込み、凹凸を作り出していることがあります。
田の字マンションに限ったことではありませんが、この凹凸が多いほどデッドスペースが生まれやすくなってしまうため、できる限り凹凸が少ない部屋を探すと良いでしょう。
部屋の四角や壁際の天井部分などに柱や梁は配置されており、場合によっては想像以上に部屋を狭く見せたり日差しを遮ったりすることも少なくありません。
家具などの配置の邪魔になるだけでなく、生活動線を遮るようにしか家具を置けなくなってしまうことも考えられます。
柱や梁の凹凸が暮らしの快適性を悪くさせてしまわないか、さまざまな可能性を考慮して室内コーディネートをイメージしてみましょう。
リビングと隣り合う部屋との仕切りが可動式
田の字マンションはバルコニーに面した部屋をリビングダイニングとする間取りが多いため、隣り合う部屋との仕切りが可動式だと、レイアウトを変えて空間を活かすことができます。
可動式の仕切りの良さは、リビングダイニングをより広くするだけでなく、小さな子どもを育てるご家庭では子どもの様子を把握しやすい環境に変えられる点が魅力です。
奥の部屋に子どもを寝かせていても、リビングやキッチンで作業することができ、子どもを起こしてしまう心配もありません。
また、ホームパーティを開く際にも可動式の仕切りを動かせば、リビングダイニングをより広くして使うこともできます。
まとめ
全国に普及している間取りだからこそ、低価格で希望のエリアや駅から近いなどのほかの条件を優先して選ぶことができます。
ただし、何事にもメリットがあればデメリットもあるものなので、自分の暮らしに合うかどうかをじっくり考えてみることが大切です。